肛門について
肛門周囲にできる疾患で、最も代表的なものはいぼ痔、切れ痔、痔ろうです。
肛門は排便するための器官で、お尻の近くに便がきたときに脳へ排便を促したり、おならか便かを感じ取ったり、便の硬さや太さを見極めたりする役割があります。
痔の疾患は、早期に治療を始めることで肛門機能を温存させたまま早期に回復することが見込めます。現在、ほとんどの痔の手術が日帰りで行うことができます。
いぼ痔(内痔核)には、メスを使わないジオン注射(ALTA療法)による治療により、肛門機能にダメージを与えることなく治療が可能です。
かねこ消化器内視鏡 肛門外科クリニック 水戸院では、外科専門医の院長がお一人お一人の症状に合わせて適切な手術法で治療を行います。手術待合は専用のスペースを完備し、プライバシーに配慮しております。
お尻の腫れや痛み、痒み、排便時の痛みや出血などの症状がある方は、お早めにご相談にお越しください。
いぼ痔(内痔核・外痔核)について
内痔核
肛門に強い圧力がかかることで、肛門を閉じる役割をするクッション部分が腫れてできます。歯状線より内側(直腸の中)にできるものを内痔核といいます。便秘、強いいきみの習慣(本人は自覚がないことが多い)、飲酒、重い荷物をもつなどの腹圧をかける仕事が悪化の原因となります。内痔核が大きくなると、排便時や歩行時に肛門から脱出し、戻らなくなることもあります。
外痔核
肛門と直腸の境にある歯状線より外側の肛門にできるイボ状の痔で、静脈叢がうっ血しています。肛門にイボ状のものができる病気には外痔核だけでなく、血栓性外痔核もあります。この2つは適切な治療方法が異なり、取り違えて誤った治療を行うと悪化させてしまう可能性があります。必ず信頼でいる専門医を受診してください。
内痔核を切らずに注射だけで治療できるのがジオン注射療法です。日帰りで受けることができ、痛みもほとんどなく気軽に受けられる治療法です。四段階注射法という繊細で特殊な手技により、注射する角度や深さ、位置、注入する薬剤の量などを精密に行っていく必要があるため、施行許可を受けた認定医だけが行うことができます。
痔核組織を切除し、痔核の一番奥、直腸内にある流入動脈を結紮します。痔核の内部には拡張した血管、肥厚した繊維組織があり、上直腸動脈からの流入血管からの血液流入により痔核がふくらんでいるため、この動脈を縛ることが手術の基本です。切除した後の直腸粘膜、肛門皮膚は縫合します。日帰り手術で切除できる痔核は2つまでと考えています。手術時間は15分ほどです。局所麻酔を使用しますので痛みにご不安の方でも、安心して手術が受けられます。
切れ痔(裂肛)について
切れ痔
肛門の皮膚が、便の通過によって切れてしまった状態で、便秘が多い女性がなりやすい傾向があります。硬い便や太い便の通過で切れるケースが多いのですが、勢いが強い下痢でも切れてしまうことがあります。肛門は粘膜ではなく皮膚なので知覚神経があり、痛みが強いのが特徴です。出血は少なく、拭いた紙に付着する程度です。
切れた部分に便が擦れると痛いので排便を無意識に避けて便秘になり、再び切れるという悪循環を起こすことがよくあります。慢性化して切れ痔の傷が深くなると肛門の狭窄が起こり、便を出せなくなることもあります。
肛門括約筋が過度に緊張して、痛みが強い場合は、過度な緊張を緩めるために行う方法です。局所麻酔をした後に、医師が肛門を指で広げていきます。切開の必要がなく、日帰りで受けられます。
肛門の裂肛が悪化して、傷が深くなっている場合には保存療法では治療ができないことがあります。その場合は、裂肛している部分を切除していきます。見張り疣や肛門ポリープがある場合には、裂肛切除と同時に切除することができます。入院の必要がなく、日帰り手術で行うことができます。
裂肛の痔が慢性化してしまうと、肛門が狭窄していきます。このようなケースでは、皮膚弁移動術(SGG)による手術が有効です。深い傷の線維化した部分や瘢痕化した部分のみを取り除き、周辺の皮膚を持って被せます。入院の必要がなく、日帰り手術で行うことができます。
痔ろう(穴痔)について
痔ろう
肛門内外をつなぐトンネル状の穴ができてしまった状態です。痔ろうはまず、肛門周囲膿瘍からはじまります。これは、肛門と直腸の境目の歯状腺にある肛門陰窩というくぼみが細菌感染して、肛門腺の炎症が内側に進んでいくものです。炎症で生じた膿が出口を求めて進みながらトンネル状の管を作り、肛門外の皮膚に出口ができてしまうと痔ろうになります。この管は、瘻管と呼ばれます。皮膚にできた出口から膿が排出された後も瘻管は残り、放置していると複雑に伸びて肛門周囲の組織にダメージを与え、肛門機能を損ねる可能性があります。
瘻管切開開放術とは、layopen法とも呼ばれ、浅い単純痔ろうに向いている手法です。括約筋を切除した際に、肛門機能に問題が起こらない肛門後方部分に起こっている痔ろうにも適しています。再発のリスクも約1~2%しかなく、根治性が高いのが特徴です。瘻管と括約筋を切開していきますが、縫合せずに瘻管を露出させます。入院の必要がなく、日帰り手術が可能です。
シートン法は、肛門機能の温存に優れた手法です。肛門陰窩にある瘻管から輪ゴムや紐状の医療器具を入れて、皮膚にある二次口へ通したら徐々に縛っていきます。縛っていくと瘻管と括約筋が徐々に切開されていきますが、ゆっくりと切開が進んでいくので、その間に切開が終わった部分から癒着していきます。治療が進むごとに、紐を少しずつ締めなおしていきながら治療を行うので、治療期間は瘻管の状態によって変わります。平均して数か月の治療期間が必要となります。治療期間中は、紐の締め直しのために、1~2週間に1度の頻度で通院していただく必要があります。